寒さに強そうなロジア人やドイツ人も「寒い、寒い」と震える中、
無事、ボスポラス海峡クルーズも敢行。
冬のトルコは日が暮れるのも早い。
ホテルの朝食バイキング以来、飲み物以外口にしていなかった私は、ホテルで休んでた友達のSと合流して、ホテル付近で外食することにした。
私達がこのエロ親父と遭遇したのは、スルタンアフメットでレストランを探している時だった。Cの時のように、観光客がよく行くような場所で待ち構えられてしまった訳ではなく、本当に偶然出くわした。
観光客の多い旧市街は、メインストリート辺りだと値段も多少高く設定されてるようだが、ちょっと足をのばした所には、庶民的なレストランがあることを発見し、「地◯の歩き方」片手に、レストランのある方向へ。
スルタンアフメット地区は、とにかく歩きにくい。石畳で、坂道が多いのもそうだけど、なんせ歩道の幅が狭い。私達も知らない間に車道に乗り出していたようだ。
そこにスーツ姿のおじさん出現。
見たところ、歳は50代くらいだろうか・・・。背は低く、いい身なりの初老の紳士って感じだった。
「危ないよ。車が来るから気をつけて」と注意してくれた。
歩きかけたおじさん、ふとこちらの方を振り向いて「何を探してるの?」と聞いてくる。
なんでも、私達が行こうとしてるレストランの場所を知ってる上に、その近くに彼お勧めのもっと安くていいレストランがあるらしいのでついて行く。
レストランの前で、てっきり別れるものだと思ってたのに、何を考えているのか、おじさんも一緒に入ってくる。そして、友人の横の席を陣取る。
「Sちゃんのこと好きー!」
「かわいい、君は僕の好み!!」
と、おじさん大興奮。
「僕はチャイ一杯だけ飲んだら帰るよー。」とか言いつつ、長居するおじさん。
帰る気配が全くない。
その内、嫌がるSの体にも「トルコじゃ当たり前なんだよ。」とか言いつつ、慣れ慣れしく触りだす始末。最初は、肩や背中辺りを触っていた手が下の方へ行く。厚顔無恥とは正に彼のことだった。友人が「もう触らないでください。」とはっきり言っているのに、それでもしつこく態度を変えない。本当にたちが悪い。怒った友人Sの口調に気がつき、初めてお触りの手を止めるエロ親父。
食事は確かに美味しかったけど、セクハラ親父が見守る中、重苦しいムード。
私は、心の中で「なんで帰らへんねん、コイツ・・・」と悪態をついていた。
「僕は、Sちゃんのことがお気に入りで、大好きなんだけど、君にも僕の友人を紹介するよ。」とセクハラ男、爆弾発言。携帯を出して、誰かとトルコ語と話し始めた。
「いやあ、もう遅いですし、結構です。」と丁重にに断るものの、セクハラ親父も負けてはおらず、
「ほんのちょっとでいいんだよ。会うだけで。僕はSちゃんと一杯飲みたいだけなんだ。それに、僕の友人も今からレストランに来ると言ってるから。」と、まあ強引なこと。
数分すると、彼の息子みたいな濃い顔の若造が現れた。嘘か本当か、若造の兄弟の誰かは日本人女性と結婚してて、今大阪に住んでるらしい。でも、まだ日本に行ったことはないので、甥っ子の顔は見たことないらしい。
そして、すっかり彼らのペースに。
最終的には「折角だから、僕らの店に来て、ちょっと一杯だけしていきなよ。すごく近くにお店があるからね。」ということになっていた。
つくづく、自分でも押しに弱いなあ、と自己嫌悪に陥りながら、連れて行かれた先は・・・。
そう、紛れもない絨毯屋だった。
閉まっていた絨毯屋をわざわざ、私たちのためだけに開けるセクハラ親父と若造。入りたくないのになあ、と思いながら、入る私達。
そして、出迎えてくれたのは二匹の毛並みの綺麗な猫達。これがまた、本当に人懐っこくて、かわいい猫で、しばし時を忘れて、猫達と戯れること数分。
猫に気を取られている間に、エロ親父が、ナッツと既に注がれた「ラク」というトルコのお酒を運んでくる。
そして、頼んでもいないのに、絨毯だかキリムを引っ張りだしてくる。
コイツら、どうしても真夜中の絨毯品評会に持ち込みたいんだな。
既に閉店した絨毯屋という密室の空間、他に客はおらず、圧倒的に不利な形勢。
それに、このラクって酒も、開封して注いでる所を見たわけじゃなし、もしかしたら変な薬とか入れられてるかも・・・と不安になった私達は、頃合いを見計らって「では、そろそろ・・・」とホテルに戻る素振り。
でも、流石に、友人に惚れた腫れたほざいてるエロじじいはしつこい。
ディナーの間中、始終つきまとわれ、楽しい夕飯タイムも台無しにされたお人好しな私達だったが、そこまでアホでもない。
「では、あさっての夕方頃また来ますよ。」と適当な口約束をつけて、そさくさと絨毯屋脱出成功!
帰りしに、若造が名刺をくれた。
名刺は、Cの店のものよりはまともだった。ちゃんと店のホームページも載っていた。
若造の名前はMといった。
エロじじいは、夕食時に確かに名前を聞いたものの、失念してまった。
彼らは友達だと言っていたけど、親子程歳の差もあるし、絨毯屋の共同経営者なのか、エロ親父が客引き担当で、客が最終的に絨毯を買えば、コミッションをもらうシステムになっているのか皆目検討つかない。
しかし、あくまでも最初はナンパに見せかけ、「お近づきになった印に・・・」と言いつつ、最終目的は絨毯屋に連れていくことなのにもかかわらず、店の存在のことは一切教えない、というやり方。
プロの客引きにしろなんにしろ、そのやり方がスマートじゃないな、と思った。絨毯を買わすなら、もっと方法もあるだろうに。私も友人も、本当にうんざりした出来事だった。しかし、この胡散臭い奴らの出現によって、初めて、トルコの絨毯屋事情について目から鱗が落ちるきっかけになったのも否めない。
思えば、私がCについてよく調べてみようと思ったのも、正直言ってエロ親父とMの存在があったからだ。今回の出来事がなかったら、Cのことは調べたりしなかったかもしれない。
なので、きっかけを与えてくれた彼らに、ある意味感謝しなければならないのかな・・・。