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トルコの絨毯詐欺師達

以前から興味のあったトルコ。アジアとヨーロッパが融合する場所。繊細で美しいイスラム建築。近くにあって遠い国。ずーっと、いつか行ってみたいなあ、と思うこと数年。同じように、トルコに行ってみたいと言う友人と意気投合して、あれよあれよという間に、気がつけばイスタンブールの地を踏んでました。そんな私達を待ち受けていたものとは...。

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嘘つきな男

私は、この界隈でもかなり悪名高いCという名の男に初日早々つかまってしまった。(Cが有名な詐欺師であることは、その日のうちに、ネットでの情報で知ることができたが、この時点では想像だにせず・・・)

友人Sは体力温存のためホテルで休んでいたので、一人でアヤソフィアの門付近に佇んでいた時だった。近づいてきたCに
「日本から来たのかい?」
「トルコにはいつからいるの?」
「今日の予定は?」
「いつまでイスタンブールにいるんだい?」
「どこのホテルに滞在してるの?」
等々、たたみかけるように英語で質問攻めにあう。
 
「日本人は英語がなかなか通じないから困るよ。でも、君は、英語上手いんだね。」
 
とりあえず、Cによる尋問タイムが終わると、今度は
 
「僕ね、普段はマンハッタンに住んでるのさ。そう、NYの。でね、昨日丁度こっちに着いたの。里帰り中だよ。実は、僕はお店を持っててね。来週には、またパリに行かなければならないんだ。大忙しさ。実業家っていうのかな。トルコ以外にもにお店を4軒持ってるんだよ。パリやリオデジャネイロでも、経営しててね。いつか、日本にも出店したいなあ。そうそう、トルコ土産はどうするの? 僕のお勧めは、やっぱりなんと言ってもキリムだね。トルコ石とかトルコランプももちろんいいんだけどね、でも、一番はなんと言ってもキリムさ。実際、僕が店舗で主に扱ってるのも、キリムでね。店以外にも工場が近くにあるんだよ。車で40分程の所にね。」と、まくしたてる。

とりあえず、やんわりと絨毯やキリムには興味がなく、お土産に買うとしたらトルコランプに興味があることを伝えた。
 
すると、イヤな顔をするでもなく、
「とりあえず、僕の店に来ないかい? すぐそばなんだよ。いろいろな小物とか雑貨も売ってるし、寄って行きなよ。もちろん、無理強いして買わしたりしないから、心配しなくていいよ。」

アヤソフィアからCの店まではあっという間だった。連れて行かれた先はお土産屋さんって感じの佇まい。
「折角来てくれたんだから、アップルティーでも飲んで行ってね。」とC。部下みたいな人にお茶を持ってくるよう何かトルコ語で命令する。

正直、Cと何を話していたか、もうはっきりとは覚えていない。旅行や経済事情、文化について当たり障りなく、いろいろ話していたと思う。会話の中で、お土産には特にキリムがお勧めだとプッシュされたことはよく印象に残っている。
 
会話の途中で、Cがズボンのポケットに無造作に入れてあった札束を出す場面があった。そこには、円、ユーロ、ポンド、ドルと様々なツーリストからせしめたであろう大金があった。

「僕は、本当に成功してるんだ。これは、今日だけの売上げなんだよ。キリムは今、本当に流行ってるし、儲かってるんだ。」

正直、トルコに来るまでキリムなんて見たことも聞いたこともなかった私は、素直に感心していた。

すると、今度は
「君、今はこうやってにこやかにしてるけど、本当は辛いんでしょ? 今まで悲しいことがたくさんあったんじゃない?僕には分かるんだ。心の奥底じゃ泣いてるんじゃない? 結婚してるの? 付き合ってる人は?」と個人的なことまで聞いてくるC。

私は適当に口を濁していた。
 
しばしの沈黙の後、Cが身の上話を始めた。
「実は、僕にはフィアンセがいたんだ。ブラジル人のね。5、6年付き合っていたんだよ。遠距離恋愛だった。よく彼女は内緒で飛行機に乗って、僕のことを驚かせに来たものさ。でも、ある日、突然、交通事故で死んでしまったんだ。あっけないものさ。もう、2年前のことなんだけどね。」
 
驚いた私は
「それは、お気の毒に・・・」
と、ありきたりの言葉しか思い浮かばない。
 
そして、ふと、Cは我にかえったかのように
「悪い、悪い。こんな話するつもりじゃなかったんだけど・・・。それに、今は前向きに考えてる。特別な誰かを見つけて、結婚して、家庭を持ちたいんだ。子供が生まれたら、仕事の量も減らすつもり。子育てには参加したいしね。」と明るく話しだすC。

運良く、その日の午後はボスポラス海峡クルージングを予約していた私。それを口実に、Cの店を後にすることに。
 
「そこの角まで送るよ。」と言うCが、わざわざ一緒に外までついてきた。聞いてもいないのに、角の店は親戚がやってる店だと言い、そのすぐ近くにもCのキリムの店があった。一瞬だけ店内に入ったところ、店の中には大男が数人いて、キリムだか絨毯を広げたり、丸めたり、移動させたりしていた。

別れ際、
「今日は短い間だったけど、いろいろ話せてとても嬉しかったよ。もっと、君といろいろ話したいなあ。もっと深いこととかも、ね。折角だし、今日一緒に夕飯、と言いたいところだけど、何時頃クルージングから帰ってくるの? 都合がつかないなら、明日の晩、夜景を見ながら一緒に食べようよ。一緒に遊びにきてる友達も連れてきてもいいけど、そうすると、二人だけで深い話はできなくなってしまうかもね。でも、どっちでもいいよ。一人で来てもいいし、友達のSちゃんと来ても。明日、夜8時半頃、お店に来てね。」と勝手に約束を取り付けながら、ハグしてくる。

キリムなんて買うつもりは毛頭なかったけど、なんかちょっとしたお土産程度なら、Cの店で買ってもいいかもとさえ考えてた私は、名刺だけはもらっておくことにした。

もらった名刺に目を落とすと、そこには、ホットメールのメールアドレス。NY在住とか世界展開してるとか言う割には、お店のホームページさえ存在しないようだ。名刺からはどうも安っぽい印象しか伝わってこない。でも、その時の私は、「何かおかしい」と違和感を覚えたものの、そう深くは追求せず、クルーズ出発時間のことを気にかけながら、ホテルへと急いだ。
 
しかし、同日の夜、幸いにホテルにWiFiがあったので、興味がてら彼の名前を検索してみたところ、かなりきな臭い人物で、危険な男であることが分かった。

最初のうちはまさかと思いつつも、読み進めてみると、どう考えてもCと一致している。その日は、トルコの絨毯詐欺の手口について夜遅くまでネットで調べ、寝付くのが遅くなった。

私はトルコ初日にとんでもない男に詐欺の洗礼を受けてしまったのだった。

もちろん、私はその後Cの店に行くことはなかった。しかし、短いイスタンブール滞在中、トラムの駅付近で、一度だけCとすれ違ったきりだった。
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